境界による壁の表現
boundary /L1/a /L1/b は壁を置く行ではない。二つの空間の間に「境界という関係がある」と宣言する行である。壁芯の線分そのものはどこにも書かれない — 二つの領域の共有辺として導かれる。
この一つの事実から、覚えるべき規則がまとめて出てくる。三つを別々に暗記する必要はない。関係であることを覚えれば足りる。書き方は boundary にある。
実体は関係に乗る
境界は二つの空間の共有面という座を与え、実体はその座に乗る。
- 水平 — 壁・カーテンウォール・手すり・ガラス間仕切り・開放
- 垂直 — 床・天井・スラブ・屋根・吹抜け・階段・スロープ・昇降機・エスカレーター
厚み、仕様、耐火、遮音、勾配、天端高 — 実体に属する値はすべて関係が持つ。開口は関係の上の区間として置かれる。
なぜ空間の側に置かないのか。関係は座を与えるが、空間の属性は座を与えないからである。実体を空間側に置けば、どの面に乗るかを導出側の規則で補うことになり、そこが曖昧さの入口になる。上下のスラブを、下の空間が天井として、上の空間が床として別々に主張できる状態は原本ではない。関係なら所有者が一つに定まる。
この決定には帰結がある。外部は空間でなければならない。屋根が関係であるためには空が、接地する床が関係であるためには地盤が、相手の空間として存在しなければならない。だから .muro には space /out exterior が現れる。
規則1 — 接していない空間の間には境界を書けない
関係の宣言だけがあって線分が導けない状態は、成立していない。
grid X 0 3600 7200
grid Y 0 4000 8000
level L1 0 h:2400 slab:150
space /L1/a room X1..X2 Y1..Y2
space /L1/b room X2..X3 Y2..Y3
boundary /L1/a /L1/b
✖ b1.muro:line 6: The spaces do not touch, so no boundary can be derived: /L1/a | /L1/b
この二室は角で触れているが、koyu の「接する」は長さのある辺を共有することを意味する。角の一点は接触ではない。
規則2 — 一つの関係が複数の線分に割れることがある
領域を持たない空間 — 外部など — との境界は、部屋の外周から他の空間と接する区間を除いた残りである。たいてい複数の辺に分かれる。関係は一つ、線分は複数。
だから外壁に開口を置くときは、どの辺かを選ぶ必要がある。
grid X 0 3600
grid Y 0 4000
level L1 0 h:2400 slab:150
space /L1/living room X1..X2 Y1..Y2
space /out exterior
boundary /L1/living /out
door w:900
✖ b2.muro:line 7: There is more than one boundary segment; pick an edge with edge:N/E/S/W (/L1/living | /out)
方位は座標系から決まる。X は東が正、Y は北が正。したがって N=+Y、S=−Y、E=+X、W=−X。そして edge は a 側 — 先に書いた空間 — の矩形から見た辺である。
grid X 0 3600
grid Y 0 4000
level L1 0 h:2400 slab:150
space /L1/living room X1..X2 Y1..Y2
space /out exterior
boundary /L1/living /out t:150
door w:900 edge:S
書く順を入れ替えれば edge:S の指す辺が変わる。方位の規約は 向き に、辺の選び方は edge を含む位置の書き方 にある。
規則3 — 同じ空間対に境界を二度書けない
関係は同一性を持つ。一つの関係に二つの行があれば、一つの問いに二つの答えがあることになる。
grid X 0 3600 7200
grid Y 0 4000
level L1 0 h:2400 slab:150
space /L1/a room X1..X2 Y1..Y2
space /L1/b room X2..X3 Y1..Y2
boundary /L1/a /L1/b t:120
boundary /L1/a /L1/b type:open
✖ b3.muro:line 7: Duplicate boundary: /L1/a | /L1/b (first seen at b3.muro:line 6)
後勝ちで黙って上書きすれば、この壁が壁なのか開口なのかは行の並び順で決まってしまう。それは原本ではない。
関係だから、同一性を書かなくてよい
uid を書けるのは空間と集約 (space / zone) だけである。関係に uid は書けない。
理由は関係の性質そのものにある。関係は必ず二つの空間の間にあるので、両端が定まれば関係も定まる。外部が指したいのは空間であり、関係を指したければ両端の空間を指せばよい。
そして数の問題がある。関係の数は空間の数を上回る — 同梱の複合建築は 425 空間に対して 1,364 境界を持つ。関係ごとに uid を書けば、「一棟が機械の視野に入る」という目的を自分で削ることになる。
同一性の全体は 同一性 にある。
書く順序の制約は小さい
boundary は空間より先に書いてもよい — 関係の宣言は前方参照できる。前後関係が要るのは grid と level だけで、これらは使う行より前になければならない。
この先
- 既定の境界 — 接する空間の既定が壁であること
- 平面図の生成 — 関係から線分が出るところ
- boundary の書き方
- 既定境界